5.3 iSize Feedback

[1] 目的
KEKBは、電子3.5GeV陽電子8.0GeVの衝突型加速器である。 ルミノシティ・リミットの原因の一つに、LERの垂直方向のビーム・ブローアップ問題がある。 ブローアップの原因として、シングルビーム・ブローアップとビームビーム効果によるものの2つがある。 このうち、ビームビーム効果によるLERのブローアップは、エネルギートランスペアレンシーのアンバランスとシングルビームブローアップとで、ますますブローアップする傾向にある。 さらに、一度相手のビームより大きくなってしまうと、相手ビームよりもっと非線形のビームビーム力を受けやすいということも、LERのブローアップを招く原因になっている。 このビームビーム効果によるLERのビームサイズは、HERのビームサイズが大きくなると緩和されることが知られている。 このことを利用して、HERの垂直方向のビームサイズを人為的に大きくし、両リングの垂直ビームサイズ比を一定に保つのが、iSize Feedback である。(ちなみに、iSize の"i" は、Interaction Point のSize という意味だと思われる・・・。)

[2] 原理
HERの垂直方向のビームサイズは、以下のようにして大きくしている。
KEKB両リングには、24組のNon-Interleavedの六極電磁石のペアが設置されていて、XY-Couplingの補正等に用いられている。 iSizeでは、これらのうち最も磁場の強い六極電磁石ペアのところ(しかもアーク部)にSin-likeのバンプをたてている。 こうすることで、
1. 水平方向のDispersionの一部が垂直方向に回り込み、これがバンプの外側にもれて、リング全周に垂直方向のDispersionが発生し、垂直方向のビームサイズが大きくなる。
2). バンプ内に発生したXY-Couplingは、ここで閉じるので、外部に影響が及ばない。
図1にHERの六極電磁石付近に1mm高さのバンプをたてた時の軌道とDispersionを示す。 バンプをたてるのは六極電磁石付近の3台の垂直Steering電磁石である。 現在はまだ使われていないが、実はLERにも同じような iSize System がある。(逆にLERを太らせたいときは、CCCにお願いしてバンプをたててもらっている。) 設置場所は、HER、LERともに富士−大穂間のアーク部で、iSize専用Steering電磁石は各々3台ずつあって、電源はD6にある。
図2に、バンプの高さと垂直エミッタンスの関係の計算値を示す。 これは、'01年3月のHERのパラメーター(TuneがHalf Integerの上)を用いて、SADで計算したものである。
ビームサイズは、両リングのSynchrotron Radiation Monitor(SRM)で測定された垂直方向のものを用いている。 SRM自身の測定頻度は約5Hzであるが、レコードが更新されるのは、約1秒毎である。(SRMの項を参照。) 従って、iSize Feedback Routineも、約1秒毎に回っている。
2.jpg
[3] iSize Feedback Panel の説明
図3に、ある日のiSize Feedback Panel を示す。
7.jpg
<左半分>
@トレンド・グラフ
5秒毎に更新される。
^LER-Bump Height (mm)
薄赤紫...Set値、濃い赤紫...CCCのReadBack値
_HER-Bump Height (mm)
薄紫...Set値、濃い紫...RecordのReadBack値
★正常なときには、Set値しか見えない。 ずれて2本見えるときは、正しく設定されていない時である。
 -> Panelを立ち上げ直すとうまくいくときがある。
`水平方向のビームサイズ(μm)
紅色...LER、空色...HER
a垂直方向のビームサイズ(μm)
赤色...LER、青色...HER
b垂直方向のビームサイズ比
緑色...測定値、黄色...ターゲット値、薄茶色...水平方向のビームサイズ比
cCsIのルミノシティ
正しくは、Lspec/Bunch/Yellow。CsIで40秒平均で測定されたルミノシティを、Cerrent とバンチ数で割ったものを、さらにReference(過去に良かったときのfill)でNormalizeしている。

A垂直方向のビームサイズ比 vs. Lspec/Bunch/Yellow
CsIで10秒平均で測定されたルミノシティを、Cerrent とバンチ数で割ったものを、さらにReference(過去に良かったときのfill)でNormalizeしている。
ほとんどが茶色だが、最新の5点は緑色で表示されており、しかも線で結ばれている。 これらの線が横に広がっているとき(傘のような形をしているとき等)には、そのピーク値をターゲットにすると良い。 縦にのびているときは、サイズ比と無関係にルミノシティが変化しているときである。 Luminosityのレコードが更新されないと、グラフも更新されない。
BHER BumpHeight (mm) vs. HER の垂直方向のビームサイズ(μm)
緑の点は、過去に測定されたデータ。 明るい緑の点は最新のデータ。 青い線は、それらを双曲線でフィットしたものである。 赤い線は、LERのビームサイズをターゲット値で割ったもの(HERビームサイズのターゲット値のようなもの)。 明るい緑の点が赤い線に近づくようにフィードバックしている。
赤い線がフィットした青い線から離れたときは、iSize でのコントロールの範囲外になったときで、HERのビームサイズはバンプをたてなくても十分大きく、これ以上HERを小さくできない。
-> ルミノシティが低いときには、HERのIP DispersionやWaist Scan の調整、ひどいときにはOptics Correctionが必要である。
C3台のiSize用Steering電磁石の設定値・読み返し値等
・Kset...K値の設定値(μrad)、
・Kreadset...DACの読み返し値(μrad)、
・Kread...ADCのモニター値(μrad)、
・Ireadset...DACの読み返し値(A)、
・Iread...ADCのモニター値(A)
普段は気にしなくても良いが、いくらバンプをたててもビームサイズに効かないときは、
ロ @-_に2本現れていないか
ワ KreadやIreadの値が変化しないか(多少はいつもふらついている)
をチェックすること。 ワ のときは、電源OFFや、通信がうまくいっていない等が考えられる。
・Write BumpPattern ボタン
HERのOpticsが変わったときにこのボタンを押す。(たいてい、小磯さんが押してくれている)iSizeのバンプのパターンは、ファイルに書かれていて、CCCがこれを見てiSizeバンプをつぶさないようにしている。 このボタンを押すと、その時のOpticsで計算してバンプパターンを書き直す。

<右半分>
DiSize Bump Direct Set
^LER Sextupole Bump Height
・LERのiSizeは、まだCCCにバンプをたててもらっているので、まずCCCの画面の右下の、iSize Feedback のRadio Button をチェックする。
・iSize Feedbackの画面のCursor Entryで数字を入れ、LER Direct Setボタンを押す。 
・Readbackが返るまで約20秒かかるので、待つ。 グラフ@-^で2本が重なるのを確認する。
・Bumpをたてる作業が終わり、iSize Bump Heightを0に戻しても良くなったら、必ずCCCの画面のiSize Feedbackのチェックを外しておくこと。
_HER Sextupole Bump Height
・iSize Feedbackの画面のCursor Entryで数字を入れ、HER Direct Setボタンを押す。 
・Readbackはほとんど同時に返ってくる。 グラフ@-_で2本が重なるのを確認する。
`SetのLimit
・Bump Height upper limit
・Bump Height lower limit
・Max Step of Bump Height
・HER Size Limit
ム各々、Cursor Entry でSetする。 特にFillの最初にiSize Bumpをたてすぎて、HERのLifeがないときなど、upper limit で制限する。

EiSize Feedback
^ビームサイズのモニター
・Measured Beam Size(Av.) LER
・Measured Beam Size(Av.) HER
・Measured Beam Size Ratio(Av.) LER/HER
ム平均値なので、グラフの値と微妙に異なる。(今は1回平均なので、同じはずである)
・Number of LER/HER size : 0/0 times
ムSRMの測定回数。どちらかだけが更新していてもう一方が0のままの時は、SRMが死んでいるので、立ち上げ直すこと。(→SRMを参照。)
・Taking Size data
ム今の状況を表示。最近はあまり意味がなくなってきた。無視して良い。
_ターゲットの設定
・Size Ratio Changerを使うとき
"Programmable iSize Changer"のパネル(kbl/Collisionの中)を立ち上げ(図4)、Startボタンを押す。
Size Ratio Changerをチェックする。 
・DirectにSetするとき
Size Ratio Changerのチェックをはずす。 値を打ち込む。 Set Target Valueボタンを押す。

`Weightの設定
・Weight for SRM(W)
SRMの測定値が、ルミノシティに無関係に振動するときなどに用いる。0〜1の数字。
σ=σ(SRM)*W + 4μm*(1-W)
通常は、1でよい。
・# of Average Points for LER(HER) size
SRMの測定を平均のするための測定回数。 最近は、1回。
・Damping Factor
入力:Damping Factor(D0)、Weight for Damping Factor(W)
出力:Weighted Damping Factor(D)
 
 
 

D0は、全体の大きさを決める。 Wが大きいと、ターゲット値から遠いときにより収束力が強くなる。 iSizeが振動するときは、D0を小さくするか、Wを大きくする。
・Weight for old Parabola data
BのPlotでは、aその他で設定された"Number of New points for Parabola fitting"の最新の点以外は、0.1mm毎のBinに区切られていて、そこに入った点にWeightをつけて平均している。今は、Weight for old Parabola dataは2にしてある。1だと、新しい点のみとなる。
aその他
・Waiting Time
iSize BumpをsetしてからSRMを読むまでの待ち時間。
・Number of New points for Parabola fitting
`の"Weight for old Parabola data"に記したとおり。
・LER Current Ratio Feedback(Col.) Starts
iSize Ratio Feedbackを開始するLERの電流値。 最近は、Programmable iSize Changerを使うようになったのでこれはもはや廃れてしまった。 昔は、Injection時にHER Beam Sizeをある一定の値にFeedback し、LER電流がこの設定値以上になったら、Collisionと同じようにRatioでFeedbackするようにしていた。
・Anchor Point
BumpHeight HERと、BeamSize HERがある。 これは、グラフBに人為的に点を加えるもので、10点のWeightがかかっている。 測定点が横這いになってしまったときに、Fitの線の傾きが小さいと、Targetの線との交点のエラーが大きくなり、BumpHeightの設定が振られる。これを避けるために、Fitが適当に傾きを持つようにAnchor Pointを設定する。
bFeedback On/Off
・Start/Stopボタン
FeedbackのOn/Off。 DでDirect Set がしたいときは、Stopボタンを押してFeedbackを止める。
・Col. FB ON、Inj. FB ON
FeedbackがOnの時、チェックされているとFeedbackする。(今は通常どちらもチェックされているが、"iSize Tool"を働かせるときには、Col.FB ONを外し、Inj.FB ONをチェックする。)
・Bump Height Changer
iSize Bump HeightをLER Currentに沿って自動でDirectに変えたいとき、以下のようにする。
1. "Programmable Height Changer"のパネル(kbl/Collisionの中)を立ち上げ、Startボタンを押す。
2. Bump Height Changerをチェックする。
こうすると、自動的にFeedbackはOffになる。
再度FeedbackをOnにしたいときは、
1. Bump Height Changerのチェックをはずす。
2. Startボタンを押す。
Fグラフ制御
^上段の3つのボタン
・Clear Graphs
@のTrend Graphと、AのPlotの2つをClearする。
・Drop 1/2 Trend
@のTrend Graphのデータのうち、古い方半分を捨てる。
・Drop 1/2 Lum
AのPlotのデータのうち、古い方半分を捨てる。
_下段の2つのボタン
・Clear Parabola
BのPlotのデータをClearする。
・Drop 1/2 Parabola
BのPlotのデータのうち、古い方半分を捨てる。 ただし、E-aのNumber of New points for Parabola fittingはこの範囲外。


04/18/2001 飯田 直子
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